打球の威力を増すためにインパクトでグリップを「ぎゅっ」と握るということが書かれている卓球関係のWebページを、ちらほら見かけます。
これに関連する記事を書こうとしていたのですが、その前に、インパクトでグリップを「ぎゅっ」と握るという意識が上級者において一般的かどうかを確認しました。その結果を紹介します。
調査方法
卓球雑誌、Webページ等で、日本or世界の(元)一流選手が自らの言葉でインパクト前後の手首・手・指の使い方について語っている内容を調査しました*1。
今回の調査対象は、打球に速度(と回転)が要求される攻撃系の技術です。ストップ、ツッツキ、ブロック、フィッシュ、カット等の技術は調査対象に含めていません。
調査結果
調べた結果を、打法別に示します。
フォアハンド
基本的な打法
- 『中国ではフォアハンドは肩やひじではなく、「指で振る」というイメージで行う。それは、インパクトの感覚、指の使い方、力の伝え方を重要視しているからである...まずペンホルダーの場合は、インパクトで親指と中指に力を加える。同様にシェークの場合は、人さし指の第一関節でラケットを押す。指の中腹、第二関節ではうまく力は伝わらない』(フォアハンド(世界最強 中国卓球の秘密P.17)/偉関晴光氏)
『回転をかけるためには、前腕(ひじから先)を斜め上にたたみながら、打球の瞬間にラケットを強く握るように打球してみましょう。そうすると手首が自然と動き、ボールをしっかりこすることができると思います』『ポイントとしては、(ラケットを)引いたときにはリラックスしていて、(ラケットとボールが)当たる瞬間に前腕と指の力を使ってラケットを走らせる』(安定したフォアハンドドライブ/笠原弘光選手)- 『
打球の瞬間にだけグリップに力を入れ、ボールを強くこすりあげる』(ツッツキに対するフォアハンドドライブ/張本智和選手*2)
強打
- 『スマッシュでも強打でも、押す動きとともに、その中で球体であるボールに沿うように、柔らかく手首を使い、回転を加えて弧線を描くように指導される』(弧線(世界最強 中国卓球の秘密P.23)/偉関晴光氏)
以下は、手首・手・指の使い方が不明確ですが、ご参考まで*3。
- 『ボールを捉えるときは「ボールをラケットにしっかり当ててから飛ばす」というイメージで打球しています。ボールとラケットが当たっている時間が長いほど、球質の重いボールになって、球威が増すと思います』(ロングボールに対するパワードライブ/松山祐季選手)*4
- 『ツッツキはロングボールに比べると球質が重いので、このケースでは、ロングボールに対するときよりも強い力でボールを打つことがポイントです。強い力で打球すると、ツッツキの回転に負けにくくなることに加え、ツッツキの回転を利用して打球にスピードが出ます』(ツッツキに対するパワードライブ/松山祐季選手)*5
カウンター
こちらも、手首・手・指の使い方が不明確ですが、ご参考まで。
- 『僕がこのケースでカウンタードライブするときは、打球点を少し落とし、ボールを薄く捉える(ボールとラケットが接する時間をできるだけ短くする)イメージで打球しています』(回り込みカウンタードライブ/宇田幸矢選手)*6
- 『バックスイングでためたパワーを一気に解放し、ボールをラケットに「ガツン」と強く当てるように打つのが、僕がこの技術を行うときのタッチです。ループドライブに対して、ガツンと強く当てるように打つと自分の回転にできるので、ループドライブの回転の影響をあまり受けずにカウンタードライブすることができます』(ループドライブに対するフォアハンドでのカウンタードライブ/吉村真晴選手)*7
フリック
『親指と人差し指に力が入ってしまうとスナップが効かなくなってしまう...中指と薬指に力が入るイメージでインパクトの瞬間に力を入れています。できるだけこの2本だけで、後の指は添えるだけで大丈夫だと思います』『この親指と人さし指に力が入ってしまうとどうしても...スナップが効かなくなってしまって...グリップは深めになっているんですけど、そこからちょっと余裕があるくらいですかね...中指と薬指に力が入るイメージでフリックに...インパクトの瞬間、力を入れています。できるだけこの2本(中指と薬指)だけで、力は。あとは添えるだけで大丈夫だと思います』(フォアハンドフリック/吉村真晴選手)- 『パワーフリックは、ネットを越えたくらいの高さから叩きつけるイメージで打つので、少しひじを伸ばし気味にして、手首を固定させて打とう』(パワーフリック(卓球王 水谷隼の勝利の法則P.107)/水谷隼選手)
(2020年12月29日、卓レポの記事に関する記載を修正しました)
(次回に続く)