前回
の続きです。
今度は、MP関節を曲げることについて、解剖学等の知見を調べた結果を紹介します。
MP関節を屈曲させる主動作筋の一つに、虫様筋があります。
下の図は、右手を手のひら側から見たときの虫様筋の位置を示します。
虫様筋の特徴
虫様筋には以下の特徴があります。
(1) 骨格筋(錘外筋線維)の伸張を感知するセンサー(筋紡錘)が多く存在する。
骨格筋とは、骨格を動かす筋を指します。つまり、他の筋肉に比べて筋の伸び縮みを検知しやすいので、繊細な動作をしやすいと考えられます。*1
(2) MP関節を曲げ、PIP関節、DIP関節を伸ばす作用がある。
私見
虫様筋の特徴から以下のことを考えました。
1.繊細な動作について
ペンホルダーグリップでは払い、ストップ等の台上処理がやりやすいとよく言われますが、これに虫様筋が関与していると思います。
虫様筋の伸縮は指の各関節(MP関節、PIP関節、DIP関節)の動きに関連し、各関節の動きはラケット操作に関連するためです。
しかし、シェークハンドグリップの場合、これらの関節を曲げたり伸ばしたりすることは、ペンホルダーグリップの場合ほどラケット操作に関連しません。
これは、シェークハンドグリップはペンホルダーグリップに比べて台上処理がやりにくいことの一因と思われます。
2.MP関節を曲げ、PIP関節、DIP関節を伸ばすことについて
で紹介した、卓球レポートの2022年のアジア競技大会代表選手選考会の記事を覚えていますでしょうか。
この記事中の吉村真晴選手の写真は、まさに中指~小指のMP関節が曲がり、PIP関節、DIP関節が伸びているように見えます。
もう一度、上の記事から写真を引用します。
吉村選手本人が意識しているにせよ、していないにせよ、虫様筋を十分使ってラケットを握っている(少なくともそのような場面がある)と推測されます。
本人がどのような意識を持っているか、尋ねてみたいものです。
*1:但し、手の他の筋肉と比べてどの程度多いかは、調べがついていません。