TTmemorandumのブログ

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「てこの原理をイメージ」するとは?(1)

卓球王国2023年2月号に、孟祥瑞さんによる「表ソフトのツッツキ打ち」についての記事が載っています。

卓球王国本誌と連動したYoutubeのWebページもあります。

www.youtube.com

「シェークで裏裏でバックドライブがうまくできません」→「バック側のラバーを表ソフトに変えてツッツキをミート打ちで攻撃しましょう」

まるで筆者のための企画です。ありがとうございます。

動画の15秒あたりに

右ひじを支点にしてコンパクトにスイング

てこの原理をイメージする

と字幕が出ます。

ところが、「てこの原理をイメージ」しようとしても、そのイメージがよくわかりません。

そこで、梃子(てこ)の説明から始めて、このイメージを解き明かしてみます。

梃子とは

梃子は、小さい力で重い物を動かすためのものとして知られていますが、短い移動距離を長い移動距離に変換するためにも使えます。

中学校(?)の理科の授業で、下のような図を見たことを覚えていませんか?

  • 支点:てこを支える点
  • 力点:てこに力を加える点
  • 作用点:物体に力が作用する点

3つの梃子は、支点、力点、作用点の並びが異なります。

第1種の梃子では支点、第2種の梃子では作用点、第3種の梃子では力点が並びの中央にあります。

体のどこに梃子をイメージするか?

孟さんは体のどこに梃子をイメージするかを明示していないので、まずこれを明らかにしましょう。

これは、

  • 「右ひじを支点にして」
  • 「コンパクトにスイング」

という説明から、前腕に梃子をイメージすると考えてまず間違いないです。

このとき、支点、力点、作用点は、それぞれ以下のとおりです。

  • 支点:上腕の肘側*1
  • 力点:<後ほど説明します>
  • 作用点:前腕の手首側*2

おそらく、孟さんは、「ひじ」という言葉を上腕の肘側の意味で使っているのでしょう。ここでもその意味で「肘(ひじ)」という言葉を使います(上腕と前腕の両方に関係する関節としての肘には、「肘関節」という言葉を使います)。

そうすると、肘を支点にして前腕を梃子として使い、手首を介して物体(手+ラケット)に力を作用させることがわかります。

イメージで伝えたい前腕の動きは?

次に、「てこの原理をイメージ」することによって、前腕のどのような動きを伝えようとしているかを明らかにしましょう。*3

前腕の動きは、

  • (肘関節の)屈曲/伸展
  • (肘関節の)回内/回外

に大別されます。

回内/回外の動きだけ図示します。

第1種~第3種の梃子の図とこの図とを見くらべると、前腕の長軸方向を回転軸とした回内/回外の説明に、梃子の例を使うとは考え難いです。

消去法で、「てこの原理をイメージ」するとは、肘関節の屈曲/伸展を行うように前腕を使う動作の原理をイメージすることであると考えます。

どの梃子の原理をイメージするか?

次に、第1種~第3種の梃子のうち、どの梃子の原理をイメージするかを明らかにしましょう。

これは、

  • 前腕に梃子をイメージすること
  • 作用点(前腕の手首側)が梃子(前腕)の端にあること

から、作用点が端にある、第1種の梃子

か第3種の梃子

であると考えられます。

(続く)

*1:上腕骨が橈骨・尺骨と接する、上腕骨側の点です。

*2:橈骨・尺骨が手を構成する骨と接する、橈骨・尺骨側の点です。

*3:これ以降の説明では、梃子の原理を使っている動きに対して、その正しい原理をプレーヤーにイメージさせることにより、その動きをうまくできるようにする指導方法を想定しています。