5年ほど前に書いた
に関連して新たな情報を得たので紹介します。
1.前の記事の振り返り
まず、前の記事の内容を簡単に振り返ります。主にバックハンドを想定しています。
- インパクト時に手首の力を抜いて(スナップを利かせて)振る場合(以下、打法1)は、ラケット+手が球に衝突すると考えることができる。
- インパクト時に手首を固定して振る場合(以下、打法2)は、手と前腕が一体化して、ラケット+手+前腕が球に衝突すると考えることができる。
- 打法2のラケット側の速度が打法1の半分になっても、打法2のラケット側の重さが打法1の2倍を超えれば、ラケット側の運動量(→衝撃力)が増加する。
- 上に書いた状況があり得るなら、ラケットを速く振るほど速い球を打てる、とは限らない。
2.新たな情報
上の内容は、元埼玉工業大学教授の川副先生の研究成果です。川副先生は、川副研究室-KAWAZOE-LAB | テニスを科学するというWebページで積極的に情報発信を続けていて、卓球に関しては、40 mm ボールの反発性能(38mmボールとの比較)などの研究をされていました。
この内容のうち、1.に関連するものを、筆者が理解できる範囲でまとめてみました。
- ラケットとボールとの衝突におけるラケットの反発性能を予測するための物理モデルを構築した。
- ラケットとボールとの衝突を質点と他の質点との衝突としてモデル化するために、ラケット面の打点に換算した卓球ラケットの質量(換算質量)を算出した。
- ラケットのみの系とラケット+腕の系とについて換算質量を算出した。
- この場合、換算質量に及ぼす腕系の影響は非常に大きい。
なお、筆者が扱ったのはラケット+手の系とラケット+手+前腕の系で、川副先生が扱ったのはラケットのみの系とラケット+手+前腕+上腕の系です*1。
系の定義が若干異なりますが、換算質量に及ぼす腕系の影響が非常に大きいなら、ラケットを速く振るほど速い球を打てるというわけではないかもしれません。
話をさらに進めましょう。
- 静止しているラケットにボールが衝突する場合について、ラケット面打点の換算質量を変えたときの反発力係数*2を計算した。
- 反発力係数は、宙づりの静止ラケット(ヘッド速度VRo=0)にボールを衝突させたときのボールの跳ね返り速度VBと入射速度VBoの比eを指し、ラケットを振らないでボールを当てただけのときにボールが良く跳ね返る度合いを示す。この係数が大きいほどボールがよく跳ねる。
- 衝突速度が 8, 16, 24m/s (時速28.8, 57.6, 86.4km)の場合、換算質量を増しても反発力係数への影響は非常に小さい。
- その理由は,ラケット単体だけでも,その換算質量はボールに比べたらはるかに大きいからである。
結論として、腕系を考慮すると換算質量は非常に大きくなるが、反発力係数にはほとんど影響しない(つまり、ボールの跳ね方はあまり変わらない)とされています。
3. 私見(感想)
まず、卓球についてこんな研究をしている人がいたことに驚きました。
次に、川副先生の研究はラケットが静止している場面の話であるのに対して、筆者の疑問はラケットが動いている場面の話です。このため、川副先生の研究結果をそのまま筆者の疑問への答えとできるかについては、よく理解できていません。
3つ目に、換算質量(ラケット面の打点に換算した卓球ラケットの質量)の算出において、プレーヤーがラケットに力を加える位置の違いがどのように影響するのかが気になりました。バックハンドを例にとると、親指でラケットに力を加えるとき(ラケットの重心近くに力を加えるとき)と、そうでないとき(例えば小指でグリップをしっかり握るとき)とで、換算質量にどの程度の違いが生じるかです。
もう少し理解を深める必要がありそうです。
*1:テニスラケットに関する同様な発表内容に「肩から手までの腕系」と書かれていることからの推測です。