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フリーハンドの使い方(フォアハンド)(2)

前回ttmemorandum.hatenablog.jp

の続きです。

馬龍(Ma Long)選手を例にして、フォアハンドドライブにおけるフリーハンドの使い方について私見(仮説)を示します。

バックスイング

まず、バックスイングの際に身体の前にフリーハンドを伸ばします。これにより、身体を通る鉛直方向の軸(スイングの回転軸)の周りの慣性モーメントが、フリーハンドを体幹部の近くに置いているときより大きくなります。

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慣性モーメントとは、物体の回転しにくさを表す量です*1

この状態で、特に背中の左側の筋肉が引き伸ばされていると推測しています。

フォワードスイング

バックスイングをとった状態から、(先に引き伸ばされた背中の筋肉を使って)フリーハンドの手を肘方向に引くように動かします*2。この動きは、フリーハンドを(1)スイング方向に引く動きと、(2)体幹部へ引き付ける動きとに分解できます。

2つの動きに分解した上で、それぞれの動きの働きを説明します。

(1)フリーハンドをスイング方向に引く

フリーハンドをスイングする方向に引くと、足腰にはスイング方向と反対向きの力が加わります(作用反作用の法則)。

作用反作用の法則を体感できる例は、回転椅子に座り、足を床から離した状態で身体の前に伸ばした腕を左側に振ると、身体を載せた椅子が右側に回転することです。この画像

https://www.famitsu.com/images/000/038/928/l_521ad0b946373.jpg

の左側(1)の状態です(元記事はこちら)。

打球するときに足は床についているので、この、椅子を右側に回す力は、特にラケットハンド側の脚にかかります。これにより、脚は、この力がかからないときより強い力を発生して*3、スイングする方向に体幹部とラケットハンドを回転させます。

(2)フリーハンドを体幹部に引き付ける

フリーハンドを体幹部に引き付けることにより、スイングの回転軸周りの慣性モーメントが小さくなります。同じ力が加えられた場合、慣性モーメントが小さいと、大きいときより回転しやすくなり、身体はより速く回転します。

これは、フィギュアスケートのスピンで腕を水平に伸ばすと回転速度(角速度)が遅くなり、腕を縮めると回転速度が速くなることと同じ原理です。例えば、この画像

http://www.sapia.jp/kids_park/pigma/img/2001_pigma.png

を参照ください(元記事はこちら)。

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ラケットの加速

(1)フリーハンドのスイング方向への引きにより足腰が発揮する力が増加することと、(2)フリーハンドの体幹部への引き付けにより身体が回転しやすくなることにより、ラケットは、より加速され、一気に振り抜かれます。

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馬龍選手の強力なフォアハンドドライブには、このようなフリーハンドの使い方も貢献していると予想しています。

動画で見てみましょう。 youtu.be

早いピッチでも、バックスイング時にしっかりとフリーハンドを身体の前に伸ばし、その後に引いていることがわかります。

*1:例えばここをご参照ください。

*2:フリーハンドの前腕の長手方向に手を引くように動かします。

*3:筋肉の伸張反射が働くためと思います。