カットを安定させる2つの方法
カットを安定させる方法について、世界レベルの元選手2名が対照的な見解を述べているので、ここで紹介します。
第1の方法
最初の方法は、『非才!―あなたの子どもを勝者にする成功の科学』に紹介されています。
元英国代表選手のマシュー・サイド氏(黄色のユニフォーム)
は、彼のコーチであった陳新華氏(元中国代表選手。えんじ色のユニフォーム)
の教えを実行したことにより、フォアカットの精度と安定性が数か月で向上した-フォアカットが連続して200回以上打てるようになった-といいます。
その教えは、
「どんなショットにたいしても、あらゆる点でまったく同じストロークを身につけろ」。
(右耳から足首まで)大きく弧を描いて、膝の角度はぴったり80度でまったく同じ高さでネットをとらえる(ボールをとらえる?)ように指導されたとのことです。
これをマスターしたことにより、カットが失敗したときに、何が悪かったかを即座に特定できるようになり、それが自動的な改良と再調整につながったといいます。*1
第2の方法
2番目の方法は、『続 卓球 戦術ノート 』に紹介されています。
元日本代表選手の高島規郎氏
は、
「スイングというものは、無限に存在する。すべてのボールを同じスイングラインで打球することは不可能である」
という考えです。
この考えに基づき、
「縦のラインを一定にし、高・中・低の打球点でボールをとらえる練習をしておけば、同じダウンスイングの中にボールを呼び込んでカットすることが可能だ」
としています。縦のラインについて、卓球王国のHPで紹介されている内容を示します。
要は、選手は前後方向に動かず、台から(打球点まで)の水平距離を一定にして打球することを提唱しています。こうすると、打球点は前後に変化せず、上下に変化します。
「縦のライン」とは、その上下方向のラインを指しています。
高島氏はさらに、
「ボールの深さを瞬時に判断して、その短い時間に動き、なおかつバックスイングをとってカットするというのは、完全に上級者の練習だ」
と断言し、
「ともかくこれからの卓球では、いかにして凡ミスをなくすかが、勝負のポイントになる。そこで、この『縦のライン』を頭に入れて練習をすることが重要なのである」
としています。*2
何が同じか?
両者の共通点は、カットを安定させるために、何かを一定にするということです。サイド氏はストローク全体(≒スイング)を一定にし、高島氏は縦のラインを一定にすると言っています。
何が違うか?
両者の相違点は、打球点の高さを変えるか否かという点です。サイド氏は打球点の高さを変えず(筆者の理解が正しければ)、高島氏は打球点の高さを変えると言っています。
他の相違点は、相手のボールが変化したときにスイングを変えるべきか否かという点です。サイド氏はストローク全体(≒スイング)を変えず(=一定にし)、高島氏は「すべてのボールを同じスイングラインで打球することは不可能である」、つまりスイングを変えると言っています。
(続く)
*1:第1部第3章中の「フィードバックループ」より。
*2:第1章 01「戦術の前に、まず打法あり」より。