TTmemorandumのブログ

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フォアハンドドライブ時の体の動き(3)

前回 ttmemorandum.hatenablog.jp の続きです。

前回は、骨盤と胸郭とのずれに着目して、論文の内容を紹介しました。

もう一度、この論文に基づいている(と思われる)Webページの図で、ずれ(相対的な遅れ)を見てみましょう。

https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/jiss/column/image/support/tane_11a.jpg?1193511628643

ずれを解消するための力は?

ずれと関係が深いと考えられるバックスイングからフォワードスイングへの切り換えについて、論文には次のことが記載されています。

バックスイングからフォワードスイングへの切り換えは,...主働筋の強い伸張性収縮によりもたらされたと考えられる。

この主働筋は骨盤と胸郭の両方に関連する外腹斜筋、内腹斜筋であることが、論文に暗示されています。

それぞれ、以下の図に示される筋肉です(体の前方から見た図です)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/T/TTmemorandum/20220320/20220320122719.jpg

ずれの大きさ

さて、一流選手は、フォアハンドドライブのときに、胸郭と骨盤とを、可動域に対してどの程度捻っているのでしょうか?

腰(体幹関節)の可動域測定では,骨盤に対して胸郭を可能な範囲で,大きく左右に回旋させた

より、体幹関節の可動域は、骨盤と胸郭とのずれの範囲を示すと考えられるところ、

体幹関節では,各対象者の可動域の半分程度しかバックスイングで使われていなかった

より、フォアハンドドライブ時の骨盤と胸郭とのずれは、可動域の半分程度の量であることがわかります。

まとめ

フォアハンドドライブで腰を回転させると、骨盤と胸郭とのずれと、ずれを元に戻す働きが生じます。

このずれは、骨盤と胸郭の両方がスイング方向に回転し始めた後に最大になります。

また、ずれの量は、可動域の半分程度に留まるようです。

これらの知識は、フォームをつくったり、体を鍛えたりする上で役立てることができるでしょう。

例えば、フォアハンドドライブの威力を出そうとして可動域の限界近くまで体幹部を捻ることは、必ずしも競技パフォーマンスの向上に寄与しないと推測されます。

むしろ、可動域の半分くらい体幹部が捻られることを目安として、体の動き・打球の威力を観察しながらフォームをつくっていくと、よい結果に近づきやすいと思われます。

補足説明

この実験は、フォアハンドトップスピンを、左右方向にあまり動かない場合の他、飛びつき、回り込みを行う場合について、できるだけ威力のあるボールを全力で打ち出すようにして行われています。

球出しの球種は明示されていませんが、左右にあまり動かない場合に「対象者の肩口あたりまで弾む山なりのボール」を出しているので、軽いトップスピンに対するフォアハンドと推測されます。

対下回転のときに同じような動作をするかどうかは、この結果からはわかりません。*1

また、上の内容は、バイオメカニクスに関して素人の筆者が、一般的な知識に基づいて論文の内容を読み解いたものです。誤解等ありましたら、フィードバックをいただけると幸いです。

*1:論文には、「本研究で得られた知見の一般化は,3 種の打球場面においてフォアハンドトップスピンストロークを行った時の条件に限定される」と記載されています。