TTmemorandumのブログ

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「てこの原理をイメージ」するとは?(2)

前回

ttmemorandum.hatenablog.jp

の続きです。

前回は、卓球王国の記事の「てこの原理をイメージ」することについて、以下のことを明らかにしました。

  • 前腕を梃子として使う。
  • 支点は上腕の肘側、作用点は前腕の手首側(力点は後で説明)。
  • イメージする動きは肘関節の伸展or屈曲。
  • イメージする梃子の種類は第1種or第3種。

力点の位置

次に、後回しにしていた力点の位置を明らかにしましょう。

力点の位置を1つに特定できると、イメージすべき梃子の種類が1つに決まります。

前腕を梃子の原理で動かす場合、力点は、上腕側から伸びる筋肉が前腕の骨(橈骨、尺骨)に付着する部位になります*1

前腕の骨に付着した筋肉が収縮することにより、付着部が引っ張られ、前腕に力が加わるためです。

それでは、上腕側から伸びる筋肉の付着部、つまり力点の位置を確認してみましょう。

○印で囲んだ部分が筋肉の付着部です。

肘関節を屈曲させる筋肉(右腕を前から見た図)

上腕筋は尺骨の、上腕二頭筋は橈骨の、それぞれ肘に近い位置に付着しています。

上腕二頭筋の右側の端は、尺骨ではなく前腕筋膜に付着しています。

腕橈骨筋は、橈骨の手首に近い位置に付着しています。

肘関節を伸展させる筋肉(右腕を後から見た図)

上腕三頭筋は尺骨の肘側の端に付着しています。

筋肉の収縮と肘関節の屈曲・伸展の関係

さて、これで力点となる筋肉の付着部が特定されました。

次に、肘関節の屈曲、伸展について、各筋肉がどのように働くか、前腕がどの種類の梃子として働くかを明らかにしましょう。

肘関節を屈曲させる場合

図の上側の筋肉(上腕二頭筋等)を収縮させます。○印の部分が力点です。

支点(肘*2。▲印)と作用点(手首)との間に力点があるので、前腕は第3種の梃子として働きます。

肘関節を伸展させる場合

図の下側の筋肉(上腕三頭筋)を収縮させます。○印の部分が力点です。

注意すべきは、上腕三頭筋が尺骨の肘側の端に付着していることです。

力点(尺骨の肘側の端)と作用点(手首)との間に支点(肘。▲印)があるので、前腕は第1種の梃子として働きます。

「てこの原理をイメージ」とは?

ようやく結論に近づいてきました。

シェークハンドのバックハンドのスイング(フォワードスイング)の場合、肘関節は伸展する方向に使われることが一般的と思います。

このため、「てこの原理をイメージ」することとは、肘関節を伸展させる場合の図のように、

  • 上腕三頭筋で尺骨の肘側の端を引き、
  • 肘を支点にして
  • 肘関節を伸展させるように手+ラケットを振る

すなわち第1種の梃子をイメージすることであると推測します。*3*4

しかし、卓球王国のYoutubeの動画を見ると、肘関節の伸展の動きは大きくありません。

むしろ、バックスイングからインパクトに向けて、肘関節が若干屈曲方向に動いているように見えることもあります。

机上の論としては、

  • バックスイングで前腕を回内する。
  • 上腕二頭筋を収縮させると、肘関節が屈曲するとともに、前腕が回外方向に動く。

ことにより、前腕の回外を主体としたスイングができます。

このため、肘関節を伸展させるように「てこの原理をイメージ」すると、孟さんのイメージと違うかもしれないと感じています。

これは梃子の原理に例えた真意を確認しないとわからないですね。

卓球王国さん、孟さん、梃子の原理のイメージにフォーカスした続編を期待しています。

*1:骨以外の部位に付着する筋肉もあります。

*2:この記事では上腕骨が橈骨・尺骨と接する、上腕骨側の点を指します。前回の記事参照。

*3:肘関節の伸展の場合、支点(肘)-力点(筋肉の付着部)間の距離が支点(肘)-作用点(前腕の手首側)間の距離より短いので、力点の動きより作用点(手首)の動きが大きくなります。

*4:同じ時間内に力点より作用点が大きく動くので、力点の速度(≒筋肉の収縮速度)をそのまま作用点の速度(≒手+ラケットの速度)とするよりも、ラケットを速く振ることができます。