「てこの原理をイメージ」するとは?(2)
前回
の続きです。
前回は、卓球王国の記事の「てこの原理をイメージ」することについて、以下のことを明らかにしました。
- 前腕を梃子として使う。
- 支点は上腕の肘側、作用点は前腕の手首側(力点は後で説明)。
- イメージする動きは肘関節の伸展or屈曲。
- イメージする梃子の種類は第1種or第3種。
力点の位置
次に、後回しにしていた力点の位置を明らかにしましょう。
力点の位置を1つに特定できると、イメージすべき梃子の種類が1つに決まります。
前腕を梃子の原理で動かす場合、力点は、上腕側から伸びる筋肉が前腕の骨(橈骨、尺骨)に付着する部位になります*1。
前腕の骨に付着した筋肉が収縮することにより、付着部が引っ張られ、前腕に力が加わるためです。
それでは、上腕側から伸びる筋肉の付着部、つまり力点の位置を確認してみましょう。
○印で囲んだ部分が筋肉の付着部です。
肘関節を屈曲させる筋肉(右腕を前から見た図)
上腕筋は尺骨の、上腕二頭筋は橈骨の、それぞれ肘に近い位置に付着しています。
上腕二頭筋の右側の端は、尺骨ではなく前腕筋膜に付着しています。
腕橈骨筋は、橈骨の手首に近い位置に付着しています。
肘関節を伸展させる筋肉(右腕を後から見た図)
上腕三頭筋は尺骨の肘側の端に付着しています。
筋肉の収縮と肘関節の屈曲・伸展の関係
さて、これで力点となる筋肉の付着部が特定されました。
次に、肘関節の屈曲、伸展について、各筋肉がどのように働くか、前腕がどの種類の梃子として働くかを明らかにしましょう。
肘関節を屈曲させる場合
図の上側の筋肉(上腕二頭筋等)を収縮させます。○印の部分が力点です。
支点(肘*2。▲印)と作用点(手首)との間に力点があるので、前腕は第3種の梃子として働きます。
肘関節を伸展させる場合
図の下側の筋肉(上腕三頭筋)を収縮させます。○印の部分が力点です。
注意すべきは、上腕三頭筋が尺骨の肘側の端に付着していることです。
力点(尺骨の肘側の端)と作用点(手首)との間に支点(肘。▲印)があるので、前腕は第1種の梃子として働きます。
「てこの原理をイメージ」とは?
ようやく結論に近づいてきました。
シェークハンドのバックハンドのスイング(フォワードスイング)の場合、肘関節は伸展する方向に使われることが一般的と思います。
このため、「てこの原理をイメージ」することとは、肘関節を伸展させる場合の図のように、
- 上腕三頭筋で尺骨の肘側の端を引き、
- 肘を支点にして
- 肘関節を伸展させるように手+ラケットを振る
すなわち第1種の梃子をイメージすることであると推測します。*3*4
しかし、卓球王国のYoutubeの動画を見ると、肘関節の伸展の動きは大きくありません。
むしろ、バックスイングからインパクトに向けて、肘関節が若干屈曲方向に動いているように見えることもあります。
机上の論としては、
- バックスイングで前腕を回内する。
- 上腕二頭筋を収縮させると、肘関節が屈曲するとともに、前腕が回外方向に動く。
ことにより、前腕の回外を主体としたスイングができます。
このため、肘関節を伸展させるように「てこの原理をイメージ」すると、孟さんのイメージと違うかもしれないと感じています。
これは梃子の原理に例えた真意を確認しないとわからないですね。
卓球王国さん、孟さん、梃子の原理のイメージにフォーカスした続編を期待しています。