前回の続きで、チキータに関する学会発表をJ-STAGEで調べようという話です。
J-STAGEでの調査
J-STAGEには、日本体育学会に限らず、国内の1,500を超える発行機関が発行する3,000誌以上の刊行物が公開されているとのこと。
まずは、詳細検索で、全文に対して「卓球」and「回内」で検索してみます。
卓球のバックハンドフリック打法における利き腕の動き
すると、「卓球のバックハンドフリック打法における利き腕の動き」という資料がありました。2000年10月に日本体育学会第51回大会で発表されたものです。
被験者に、世界学生大会2位の選手と大森選手という記載がありますが、元早稲田大の大森隆弘選手(現東京アート監督)と思われます。
チキータではなくバックフリックと書かれていますが、参考までに内容を確認してみます。
資料中の右上の6つのグラフのうち、回内/回外を含む中段の2つのグラフが今回のテーマに関係しそうです。これらを参照する*1とともに、本文中から関連する記載を拾ってみましょう。
その後、肘関節は一度軽く屈曲した後、肩関節の内旋動作の開始とほぼ時を同じくしてインパクト0.2秒前に伸展を始める。肘関節が屈曲しているので、ラケットはヘッドを下げながらボールに近づいていく。そして0.1 秒前には肘関節の回内動作が始まり、手関節が掌屈しているのでラケットヘッドがさらに下がる。
肘関節は、伸展を始めた後に回内を始めると書いてあります*2。バックフリックのバックスイングで肘関節が伸展するとは考え難いので、回内は、バックスイングではなくフォワードスイング*3時に始まるということでしょう*4。
これ以前に回内/回外の記載はないので、バックスイング時の前腕の回内/回外の動きは、グラフから読み取る他なさそうです。
バックスイングとフォワードスイングとの切り換え時点が、肘関節の動きが屈曲方向から伸展方向に切り替わる時点(=一番右、上から2番目のグラフで、インパクト前に伸展の角速度が負→0→正に切り替わるときの0の点)とすると、バックスイング時には、回内動作も回外動作もあまり起こっていないようです。
スイングの続き
ちなみに、スイングは以下のように続きます。
約0.04 秒前に手関節の橈屈が始まり、さらにZ 軸回りのラケットの回転が加速され、ラケットヘッドも上方へ回転し始める。最後に、肘関節の回外と手関節の伸展がラケットを上方と打球方向へ加速して、インパクトを迎える。その後、肘関節を大きく回外したフォロースルーとなる。
先の回内の後、前腕が回外し始めてすぐインパクトし、インパクト後にさらに回外方向の角速度が上がっていることが、グラフから読み取れます。
J-STAGEのその他の調査結果
「回内」の代わりに「回外」「プロネーション」を使って検索してみましたが、探しているものは他に見つかりませんでした。
ちなみに先の資料の場合、学会は2000年10月に開催されたのですが、公開日は2017年08月25日です。つまり、発表されてから(学会員以外の一般に?)公開されるまでに17年近くかかっています。
これが普通の扱いなら、今から17年前の2000年代前半はまだチキータが多用されていなかったので、学会員以外の人がチキータ関連の研究成果を見つけるのは期待できなさそうですね。
(たぶん次回に続く)