TTmemorandumのブログ

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バックハンドドライブ時の腕の動き

股関節の外旋の話を調べてみたのですが、よい情報が見つかっていません。しかし、その過程で別の情報を入手したので紹介します。

バックハンドドライブの腕の使い方について

見つけたのは、「卓球競技のバックハンドドライブにおける上半身運動の特徴パラメータの抽出」という論文です。約10年前に発表されています。

具体的には、バックハンドドライブを、

  • 相手のバックスピン(B)に対して打つか、トップスピン(T)に対して打つか
  • コントロール(C)重視で打つか、スピード(S)重視で打つか

の2×2=4通りに分類し、それぞれについて肘関節の回外/回内角度、伸展角度等を測定しています。

実験の被験者は、競技歴が10 年以上あり、かっ過去に全国大会の出場経験のある現役の大学卓球部員5名です。

この中から一部の内容を紹介します。

肘関節の屈曲/伸展、回内/回外

本題に進む前に、肘関節の屈曲/伸展、回内/回外(=前腕の回内/回外)を絵で示します*1

https://2.bp.blogspot.com/-4Lt0uRzac00/VY4RaLZjyrI/AAAAAAAABXo/VGcJc4HGKVk/s1600/%25E5%258F%25AF%25E5%258B%2595%25E5%259F%259F-%25E8%2582%2598%25E9%2596%25A2%25E7%25AF%2580.png

引用元はこちらです。

言葉で表現すると、小さく前にならえの形から、上にある親指を体の内側に回すのが回内、外側に回すのが回外といえます。小さく前にならえの形から、手のひらを下に向けるのが回内、上に向けるのが回外ともいえます。

一つ注意していただきたいのが、上の図の0度の位置と後述するグラフの0度の位置とが同じかどうかを明確に読み取れなかったことです*2

バックハンドドライブにおける前腕の回内/回外について

測定結果を見ていきましょう。以下のグラフは、回内/回外の状態を、縦軸に角度、横軸に時間をとって示したものです。

f:id:TTmemorandum:20210514230940j:plain

角度は、回内(Pronation)が+、回外(Supination)が-で表されています。つまり、グラフの上の方は回内の度合いが強く、下の方は回外の度合いが強いことを示します。

また、時間(0%~100%)は、肘関節が最も曲がった時点が0%、最も伸びた時点が100%に対応します。おおよそ、前へのスイングを始める時点~終える時点を表していると言えます。

測定結果をざっくりいうと、前へのスイングを始める時点から終える時点に向けて、前腕は、回内した状態から回外しています。

但し、スピード重視の打ち方(BS、TS)では、回内した状態から徐々に回外し、インパクト直前に回内に転じ、その後再び回外しています。この動作について、論文では「これらの一過性の変化は,ムチ動作のように,打球直前に反動をつけて打球速度を上げるための動作と考えられる」としています。

興味を持ったところ

4つの打ち方の如何を問わず、肘関節が伸展し始める時点(≒前へのスイングを始める時点)で前腕が回内していて、そこから回外していく点です。

以前、チキータについてバックスイング時に前腕を回内させるか回外させるかわからないから調べてみたという記事

ttmemorandum.hatenablog.jp

を書いたのですが、結局、確たる証拠を得られずに調査を凍結しました。

今回はバックハンドドライブですが、前へのスイングを始める時点で前腕が回内していることがわかった点が、筆者にとっての収穫です。

また、スピード重視の打ち方で、回内した状態から回外→回内→回外と動きの方向が変わる点も興味深いです。

ちょっと気になるところ

被験者が「競技歴が10 年以上あり、かっ過去に全国大会の出場経験のある現役の大学卓球部員」であることです。

この条件、国際大会に出場するレベルの上級者も含まれます(例えば、明治大時代の水谷選手、丹羽選手などもこの条件を満たします)が、普通の中級者も含まれます*3

要は、普通の中級者を調査したかもしれず、お手本にすべきかどうか怪しいかもしれません。

また、10年以上前の実験結果なので、張本選手のような現代的なバックハンドとは異なる打ち方を測定した可能性がある点も気になっています。

ともあれ、一般向けに公開されている貴重な実験結果です。

*1:意識しておかないと自分が忘れてしまうのです。

*2:たぶん同じだと思いますが、確証はありません。

*3:学生時代の筆者ですら、この条件をほぼ満たしています。