「異質(ラバー)」の意味(2)
3回前の記事 ttmemorandum.hatenablog.jp で、
つまり、異質ラバーの「異質」の意味合いが、
・裏ソフトラバーと異なる性質(定義1)
・反対側の面のラバーと異なる性質(定義2)
のように異なるわけです。
という話をしました。
松下浩二さん(現VICTAS社長。初代Tリーグチェアマン)が執筆された「卓球超観戦術」(株式会社カンゼン。2020年11月6日初版発行)を読んでいたところ、「異質」に関する記載があったので、この話題を再び取り上げます。
「卓球超観戦術」における「異質」の定義
松下さんは、前陣速攻型について以下のように記載しています(P.102)。
この戦型は裏ソフトと表ソフトというように、異なるタイプのラバーを貼ることが多いため、「異質速攻型」「異質型」と言われることもあります。
これは定義2の使い方です。
新たな疑問
これを読むまで、「異質」という用語は、
- もともと、反対側の面のラバーと異なる性質(定義2)の意味で使われていた。
- 最近は、裏ソフトラバーと異なる性質(定義1)の意味で使われるように変わりつつある。
と思っていました。
しかし、日本卓球界の中心人物の一人である松下さんが、定義2の意味で「異質」という用語を使っているので、上の考え方は間違っているかもしれません。
そこで、「異質」という用語の最近の使い方を、あらためて調べてみました。調査対象はWebページです。
裏ソフトラバーと異なる性質(定義1)という使い方をしているWebページが多いので、定義1以外の使い方をしているものに絞って紹介します。
バタフライ
ラケットの両面に異質のラバーを貼り、多彩な球質をつくり出す選手に適した反転用ペンラケット。
ラケットの両面に表ソフトを貼ったり、両面に粒高を貼ったりしても多彩な球質をつくり出せませんので、定義1の使い方ではないですね。定義2の使い方と思います*1。
ヤサカ
カットマンや異質選手に最適なアンチスピンラバーです。
定義1(裏ソフトラバーと異なる性質)で読むと、異質ラバーには表ソフトや粒高、一枚ラバーもあるけれど、アンチスピンが最適という意味になります。
定義2(反対側の面のラバーと異なる性質)で読むと、異質ラバーには裏ソフト+表ソフト、裏ソフト+粒高等があるけれど、何か(例えば粒高)+アンチスピンが最適という意味になります。
どちらにしても、少なからず妙です。
「異質選手に最適なアンチスピンラバー」の解釈(推測)
正直なところよくわからないのですが、これは、アンチパワーがよく売れていたころ(おそらく1980年代前半でしょう)の売り文句かもしれません。
当時、裏ソフト+アンチスピンを使うカットマンが多数いました。
また、裏ソフト+アンチスピンを使う攻撃選手として、蔡振華さん(前中国卓球協会会長)、前原正浩さん(現日本卓球協会副会長)等が活躍していました。
これらを背景として、「カットマンや異質選手に最適なアンチスピンラバーです」という売り文句が作られ、それが今でも使われていると推測しています。
(たぶん次回に続く)
*1:ラケットの一面に普通の一枚ラバー、他面に粒高の一枚ラバーを貼った場合でも、面が違えば球質が変わるので、定義2の使い方と考えてよいでしょう。